とある死にたがり学生の受難

ネガティブな学生が日々感じたことをそれっぽくかいています。

お隣さんは歌がうまい。

お隣さんは歌がうまい。

お隣さんは夜中になると静かに歌を歌う。しかもそのどれもが恋の歌。片思いの歌だったり失恋の歌だったりするが、両思いの幸せな歌は決して歌わない。

一度だけその歌う姿をこの目で見たことがあった。音もなく涙を流し、辺りが静寂に包まれたような心地。歌声だけが冷えた空気の中響いて、感情の入ったそれはその辺の歌手顔負けだなんて。
そのまま隣から見ている事に気づかれず部屋に戻る姿を見送った。しかし、お隣さんがこちらに気がついていれば何か変わったのだろうか。

お隣さんは歌がうまい。

ただの隣人だった人物の心を壊して、残酷にも恋をしていることをまざまざと見せつけられ、それに嫉妬を覚える程に。