とある死にたがり学生の受難

ネガティブな学生が日々感じたことをそれっぽくかいています。

殺されるなら貴方がいい。

殺されるなら貴方がいい。

最後に視界に映すのは貴方がいい。
最後に視界に映るのは貴方がいい。

それで貴方が犯人にされるのなら貴方の前で自らの手でその決断を選び、刃を取ろう。

貴方自ら手を下してくれるのなら、それでも貴方が犯人と言われることの無いようあらゆる手を回そう。

警察にも検察にも何も言わせない。

貴方の視界で果てられるのならそれは、天に登る程幸せな事だろう。
それが完成している時には現実に天に登っている、いや地獄に落ちているだろう。


手元のスマートフォン自死を仄めかす文章を打って、画面が割れる程度に地面に叩きつける。
そうすれば、内部データがいずれ解析されて自殺と考えてくれるだろう。


震える文字で書いた遺書は机の引き出しの中。
滲む文字は涙の跡。
ここまでして自殺以外に考えるか。

スマートフォンのメモのゴミ箱に残してあるのは、死ぬのならあの人の前での文字。
普通に消去してもゴミ箱に何日か残るのを利用してある。
警察ならこれくらい見つけてくれるだろう。



目立ちにくく、持ち運びやすい折りたたみナイフ。
それをこっそり隠して貴方のもとへ行こう。



貴方の前で貴方を犯人にせずに死ぬために。

どうか覚えていて、わたしの事を。

どうか覚えていて、わたしの事を。
きっとわたし達は永遠に見せかけた一瞬。
それでも。
覚えていて、貴方の心に刻み込む程に。
覚えていて、恨まれたって構わないから。
覚えていて、それがどんな感情であっても。

それまで、それまででいいから。
愛していて、わたしの事を。
消えることの無い愛が実在するのかなんて分かりもしない。
それでも。
愛していて、それが憎悪に変わっても。
愛していて、声も姿も思い出せなくなっても。
愛していて、貴方の記憶から消え去るその時まで。

覚えていて、愛していて、愛させて。
貴方の心からわたしが死んでしまうまで。

奪い去って行く欲しい。

奪い去って欲しい。

汚いわたしでも良いと貴方が言ってくれるのなら。
散々自分の我儘尽くしで生きてきてまだ言うかと言われるかもしれないが、それでも。


他の誰でもない貴方に奪い去って欲しい。


無垢な硝子の靴が似合う様な相手がきっと貴方には似合うのだろう。

わたしはそんな子を虐める意地悪な姉といったところ。ハッピーエンドのあとには断罪が待っている様な悪役令嬢でもいいかもしれない。

そんな汚れに汚れたわたしは貴方の隣に立つ相手としては不相応。分かってはいる。

でも今の関係で満足できる程出来た人間では無いのだ。わたしは童話の中の悪役の様な奴だから。
でも、それでも幸せに手を伸ばしたっていいじゃあないか。わたしが幸せになれないと誰が決めた。
ヒロインのあの子か、物語を取り仕切る神のような存在か。

誰にも異論は言わせない。わたしはわたしの為に幸せになるのだ。あの人の隣にヒロインの様な相手が待っていようがどうしようが。
ただ、ただ少しだけやっぱり思うのだ。


奪い去って欲しいと。

自分の知的好奇心を満たしたい。

自分の知的好奇心を満たしたい。

その一心で男は行動していた。
学校でよく言う子供たちの知的好奇心を高める教育を。だとか、子供たち自らが動く様な知的好奇心を利用した教育を。だとか言うが、男には全くもって関係ない。
ただ自身のやりたい事をやっているだけなのだ。

久々に男の知的好奇心をくすぐる、つまりはやりたい事が思いついたので早速行動してみようと動き出したのだ。


ホームセンターを見に行ったかと思えば、山岳へ足を運び、かと思えばドラックストアへ繰り出す。
体力のない男には少々辛い位の運動量だったが、これからの事を思えばなんてこと無い。

どこからとも無く紙とペンを取り出すと、サラサラとその白い紙に瞬く間に黒が染め上げていく。
そしてそれを丁寧に足元へ置いた。

高所からの風は気持ちよく頬を撫でた。そして、自身の足元を見ながら幸せにそうに笑って進んだ。



自身の知的好奇心をくすぐる物、死へと向かって。

誰かわたしの手を引いて。

誰かわたしの手を引いて。

どこか遠くへ連れて行って。何も無い、誰もいないそんな場所でもいいから。
雑然としたビルが植物の様に、しかし無機質に無様に生え渡るこの世界はいつから人間まで無機質になってしまったのだろうか。

そしてこの世に違和感と息苦しさを感じるのはわたしだけなのだろうか。
もし気がついていなければ不気味だし、気がついていればなぜこの味気のない、濃度のないこの世で生きていけるのか。この人さえいればという唯一がいるのか。

だから生きていけるとでも言うのか。

あぁ、それならわたしにもくれたっていいじゃあないか。その唯一という存在とやらを。
わたしだけを見て、わたしだけを感じて、わたしだけを愛してくれるそんな。



誰かわたしの手を引いて。
愛してると言って。
貴方のただ唯一だと教えて。
わたしに愛を教えこんで。

もう、終わりにしよう。

もう、終わりにしよう。
この曖昧な恋かすら分からない。いや、恋ではないだろう気持ちを。

恋にすらならなかった。でも好きだった。

酷いくらい好きで仕方ないこの人に、恋して片思いできれば思いの行方が彼に届かなくても恋をしたという欠片さえ残れば、次の恋を期待できたかも知れない。
失恋という結果でも、恋をしたということが素晴らしいと感じられただろう。

しかしこれは恋ではない。

恋であればどれほど楽で楽しかっただろうか。
地球がひっくり返っても片思いの相手という枠にも入れることができやしない。

好きだ。好きだ。好きだ。

好きなはずなのに恋ができない。
こんなにも夢中なのに恋ができない。
そんなことなら初めから無ければよかった。

地獄の底で待っています。

地獄の底で待っています。

わたしの居場所は低い低い堕ちた者ばかりのまるでスラム。
そこにいるのが嫌とは言わない。そこから這い上がる気力も力もないのだからそこに順応するしかないだろう。

そうして地獄の底でわたしの居場所を、消えかけの居場所を無理矢理作り上げて貴方を待っているのです。

天使の様に遠い空を自由に飛ぶ眩しい貴方を。

そのへんに落ちている鉄屑を、ボロボロと崩れ落ちた人としての気持ちと良心と、その他諸々を組み合わせてガラクタの塊で出来た銃で貴方を撃ち落とすのだ。

他の天使たちがボロボロ落ちてくるのはどうでもいい。わたしの目当ては貴方だけ。

自由に飛ぶ貴方を狙うのは相当困難で。
それでも何度でも引き金を引こう。


ねえ、愛しい貴方よ。わたしは何度でも引き金を引くから。早く早く堕ちてきて。


地獄の底で待っています。